M&Aのデューデリジェンスの目的と流れを詳しく解説
2024年02月15日
デューデリジェンス
M&Aではデューデリジェンスを実施することが欠かせません。M&Aの買い手企業は、売り手企業のデューデリジェンスをすることで大きなメリットがあります。
売り手企業もデューデリジェンスを受けることでスムーズにM&Aを進めることが可能です。この記事ではM&Aにおけるデューデリジェンスの目的と流れを紹介します。
M&Aにおけるデューデリジェンスの目的
デューデリジェンス(Due Dilligence)とは、M&Aにおける相手企業の価値とリスクを調査することです。
自社で直接調査するのではなく、第三者の専門機関に依頼して実施します。M&Aでは交渉時点で相手企業から開示されている情報がすべてではありません。
デューデリジェンスを行い、M&Aを賢く合理的に進めるのが定石になっています。デューデリジェンスの目的は以下の3つです。
M&Aによるリスク要因の洗い出し
M&Aによって発生し得るリスクを調査することが、デューデリジェンスの第一の目的です。
見えていないリスクを専門機関による調査によって洗い出し、リスクを加味してM&Aをすべきかどうかを判断します。
M&A契約の条件交渉のための企業価値評価
M&A(合併・買収)のプロセスにおいて、デューデリジェンスを通じた企業価値評価は買い手企業にとって極めて重要です。
M&Aの主な目的は、統合による価値向上やシナジー効果の実現です。デューデリジェンスを行うことで、買収対象企業の価値が妥当であるかどうかを評価し、さらにシナジーによって生み出される潜在的な価値を見積もるための重要な情報を得ることができます。
M&A後の統合計画を立てるための情報取得
デューデリジェンスの目的には、統合後の計画を立てることも挙げられます。
M&Aを締結した後、速やかに統合してシナジーを創出できるのが理想的です。事前にリスクや可能性を理解しておくことで、統合計画をスムーズに立てられるようになります。
デューデリジェンスを実施する流れ
デューデリジェンスは実施の流れがほぼ定式化されています。M&Aに向けてデューデリジェンスを進める流れを確認しておきましょう。
デューデリジェンスの実施準備
デューデリジェンスの実施には準備が必要です。調査する分野を選び出し、それぞれの専門分野に応じて依頼先の専門機関の選定をします。
事業、会計税務、法務、IT、人事などのM&Aによる統合でリスクがあると考えられた項目ごとに、専門機関を選んで相談することが重要です。
専門機関との打ち合わせ
専門機関に相談を持ち掛けたあとは打ち合わせを進めます。
初期調査を実施して、相手企業について公開されているIR情報、資本政策表、事業計画書などを集めて専門機関に報告します。そして、デューデリジェンスの具体的な内容を相談して決定しましょう。
専門機関に以後の調査は委託して任せることになるので、中間報告や最終報告の期日も設定して契約書を交わします。
開示請求する内容リストの作成と送付
契約が済んだあとは、スケジュールに合わせて専門機関が相手企業に請求する開示内容をリスト化して送付します。
これはIRL(Information Request List)と呼ばれるリストで、例えば財務デューデリジェンスなら、財務諸表や株主名簿などが含まれているのが一般的です。
提出期日を設けたあとに開示請求をして、M&Aのスケジュール感にずれが生じないようにします。
開示された資料のチェック
売り手企業は、リストアップされている資料を遅滞なく用意して送付します。
開示された資料は専門機関が直接受領して内容の確認を進めていきます。
インタビューの実施
開示資料の内容を受けて、疑問点や不明点があるときにはインタビューがおこなわれます。
対面で経営者に対するヒアリングを実施して質疑応答をするのが一般的ですが、質問リストを作成して回答を依頼するという方法も用いられています。
必要な場合にはこの時点で追加資料の提出を求めて詳細を確認します。
報告書の受領
デューデリジェンスが完了した時点で、買い手企業に対して報告があります。
報告書を作成して送付するだけの場合もありますが、最終報告会を開催し、報告書とプレゼンテーションによる納品を受けるのが一般的です。
結果分析・M&Aの交渉・契約
デューデリジェンスの結果報告を受けたらM&Aについて再考します。
特に新しいリスクが見られなかったときは、そのままM&Aの契約締結を進めていきます。もしリスクが浮上してきたときにはM&Aを断念する、あるいは条件を厳しくするといった交渉をします。
まとめ
M&Aではデューデリジェンスをすると買い手企業がリスクを把握し、M&Aの条件の交渉やM&A後の計画の策定に生かせます。
売り手企業としても統合によるリスクを把握できるので、買い手企業からの求めに応じて誠実に対応することが大切です。
M&Aによってお互いに成功するための基本プロセスなので、業務ごとにデューデリジェンスを実施してM&Aを滞りなく進めましょう。