日本のGPSの精度があがったわけとは?日本版GPS「みちびき」について解説
2023年04月24日
IT(技術/活用)
日本のGPSは精度を向上させており、その理由には日本版GPSである「みちびき」の存在があります。
本記事では、みちびきの概要と必要性や、ビジネス分野にもたらしている変化について解説します。
日本のGPS精度が上がった理由
日本のGPS精度が上がった理由として、「みちびき」の活用が挙げられます。
みちびきとは、準天頂軌道の衛星が主体で構成される日本の衛星測位システムのことです。英語では「QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)」と表記します。
衛星測位システムとは、衛星からの電波で位置情報を計算するシステムで、「GNSS(Global Navigation Satellite System))と呼ばれるものです。GNSSには、一般に米国のGPSがよく知られていますが、他にも欧州の「ガレリオ」など複数のシステムがあります。
GPS衛星「みちびき」とは?
みちびきは国産の衛星測位システムで、「日本版GPS」とも呼ばれています。
2010年9月に初号機が打ち上げられました。2017年には4号機の打ち上げが成功、2018年にサービスを開始し、現在4機が運用されています。2024年までに、さらに3機を打ち上げ、7機体制になることが予定されています。
「みちびき」の必要性
衛星測位システムには、もともとGPSを利用していましたが、GPSはアメリカの真上にあり、測位に10〜100m以上の大きな誤差が出ることもありました。しかし、GPSは米国が運用しているシステムのため、日本の都合に合わせて精度を向上させられません。
しかし、みちびきは日本の真上を周回するため、建物や山など電波の障害物があっても誤差の小さな測位が可能になり、この問題点解消に役立っています。
また、本来位置情報は4機以上の衛星で測位が可能な仕組みで、数が多いほど精度が向上します。GPSと互換性のある信号を送信するみちびきの存在により、GPSと合わせて10機以上の受信が可能になったことで、現在では安定した高精度の測定が可能になりました。
「みちびき」がもたらす変化
みちびきの存在によって、人々の生活やビジネス分野において、次のような変化をもたらしています。
農業関連
みちびきの利用により、高精度なIT農業(スマート農業)の実現が可能になります。
みちびきで数cmクラスの誤差による測位を実現することで、従来は難しかった車の自動走行が可能になりました。そのため、無人の自動運転トラクターを利用して、耕作や除草にかける手間を削減できます。
また、みちびきのサービスを搭載したドローンを活用して、上空から撮影したイメージをもとに、状況を可視化し収穫量を最大化することが期待されています。
カーナビ
ルート検索や現在地の追跡などにGPSを利用するカーナビにいても、みちびきに対応したものが増えています。みちびきに対応することで、高層ビル街や山間部などGPSが受信しにくい場所でも正確な測定を可能にし、精度向上に役立っています。
ウエラブル端末
ウエラブル端末(ゴルフウォッチ)にも、みちびきに対応した高精度な製品が展開されています。みちびきの対応により、わずか誤差1m未満の正確な位置情報を提供しています。
防災での利用
ドローンなどの無人機を正確に操作することで、災害時に人が直接行けない場所を捜索したり、物資を届けに行ったりすることが可能になります。
他にも、山や海上に受信機を配置してリアルタイムに変化をモニタリングし、火山噴火や津波などの予報に役立てるといった活用方法が期待されています。
まとめ
日本の位置情報は、4機体制でみちびきの運用が開始されたことにより、大きく精度が向上しました。
それにより、人々の生活がより便利になっただけでなく、農業においてドローンや無人機を活用して効率化や収穫の最大化を図れるようになるなど、人手不足の解消を図ることにもつながっています。
2024年までに7機体制を予定していることから、今後もさまざまな分野での活用が期待できます。
出典:みちびきウェブサイト